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5. 結論
本研究では、海洋性レクリエーション活動の場として多様性を秘めた海水浴場のバリアフリー整備の現状を、現地調査、白治体に対するアンケート調査により総合的に把握した。
その結果、海水浴場でのスロープや階段は、高齢者や障害者の人間工学的な寸法を考慮し、整備されていないのが現状であり、利便施設の整備も不十分であることが判明した。
一方、自治体は水辺空間でのバリアフリー整備の重要性を認識しており、高齢社会に対応した水辺の施設整備を積極的に行う動きを見せている。
最後に、本研究は、海浜公園、海中公園、オートキャンプ場等の海洋性レクリエーション施設の集中する海水浴場のバリアフリー整備の現状を把握したが、他にもフィッシングピアやフィッシングパークといわれる海釣り施設も整備され始めている。そこで、海洋性レクリエーション施設のバリアフリー化の現状を総合的に把握するためには、海釣り施設、水族館、海の博物館などの調査もあわせて行う必要がある。
また、平成6年に総理府が行った「海辺ニーズに関する世論調査」の結果、海辺に整備してほしい施設として公園緑地、海辺付近の道路、キャンプ場などが挙げられており、自治体の高齢社会に対する関心が高まるにつれ、高齢者、障害者に配慮された海辺でのバリアフリー整備は活発化するものと思われる。
さらに、海洋性レクリエーション施設の整備計画を策定する時に、個々の施設に関連・連続性を持たせることでより明確なサイン、快適なアクセスビリティーが確保され、適度な距離に利便施設を整備することが可能になるであろう(Fig-11)。現在、比較的整備されている海水浴場でさえ前浜の整備が行われておらず、後浜の整備でとどまっている。後浜の整備を充実させた上で水に触れることの可能な安全で快適な前浜へのアクセスも検討する必要がある。

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(Fig-11. Arrangement plan of institutions)

特に、海水浴場では身体的な安全性、防犯に対する安全性の確保が必要であり、身体的な安全性を確保するためには、交通標識、案内板などによる明確なサイン計画が必要である。さらに、視覚障害者でも利用できるように音声による案内装置も設置すべきである。また、特に紫外線の強い海辺では、東屋やパーゴラ、樹木により強烈な直射同光から人々を保護する日陰を準備しておく必要がある。
防犯に対する安全性の確保では、夜間の対応が問題となっていることから、ライトアップを兼ねた夜間照明が整備されることが好ましい。
今後、高齢者・障害者に安全で快適な整備がハード面だけでなく、多くの人の意見を取り入れた社会参加型の整備(ソフト面の充実)として進行することが期待される。
■参考文献
1)建設省福祉政策研究会編:生活福祉空間づくり、ぎょうせい, 1995.1.20
2) U.S Architectural and Transportation Barriers Compliance Board: Americans With Disabilities Act, Accessibility Guidelines for Buildings and Facilities,1990
3)総理府偏:障害者白書,大蔵省印刷局,1994.12.9
4)(財)余暇開発センター:レジャー白書‘95’文栄社,1995.7.4
5)西島衛治、島田達:バリアフリ・デザイン・マニュアルに関する調査研究(2),熊本工業大学研究報告,1994

 

 

 

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